相続税と贈与。契約書の他に、口座振込、定期贈与と連年贈与に注意する。

これまでは、

前々回は「相続は、争族ではありません。相続税、贈与税も考えよう。」でした。

前回は、「相続税を考えた場合の贈与とは。契約書や未成年へ贈与は?」でした。


贈与とは、民法上で規定されており、一方の「あげます」と相手方の「もらいます」で成立しますが、書面による「契約書」を作成しておくことにより、客観的にその契約の証明性を高めることができる、というものでした。


今回は、その続きを確認します。

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(口座振込による贈与)

必ずしも銀行口座を介することが要件ではないですが、あくまで、客観性を残すためです。

「契約書はありますが、そのとおりにお金が動いているのですか?その経過が何かで分かりますか?」と質問された場合どうしましょうか?

これに対して「契約書があるのだから当然でしょう!」と回答しても説得力がありません。



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そこで、その証明方法は、銀行預金を利用することです。

親の通帳と子の通帳を用意し、親の口座から出金した資金を子の口座に振り込むのです。
つまり、「親の通帳における出金履歴」と「子の通帳における入金履歴」を残すことにより、お金の移動を客観的に証明するのです。


なお、未成年者である子への贈与がなされた場合、親権者である親が管理を行うことが多く見受けられます。

でも、あくまでも通帳のお金の持ち主は子ですから、親権者であっても親は安易な使用を行わないようにしましょう。

その預金通帳に、家計費のための支出履歴などが無いように注意しましょう。

「契約書があり、振込みによる資金の移動がありましたが、家計費や親の車の購入代金などの出金がたくさんありますね。これを見ると、子の口座と言えないので贈与ではないでしょう!」などと言われてしまうかもしれません。

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連年贈与と定期贈与

<連年贈与>


連年贈与とは、毎年繰り返し贈与を行うことです。

そのたびに新たな贈与契約を結びます。

例えば「100万円贈与する」という単発の贈与契約を毎年繰り返す場合が該当します。

また、ある年は100万円、ある年は90万円となる場合もあるわけです。

さらに、贈与を何年間行うのかもわからないため、課税を行うとしても計算が不可能です。

結果的に10年間続けたとしても、たまたま「100万円を贈与する」という単発の贈与契約を10回繰り返しただけです。

「連年贈与」の場合には、ある年の贈与額が基礎控除額である110万円以下の場合、贈与税はかかりません。

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<定期贈与>

定期贈与とは、定期の給付を目的とする贈与をいい、一定期間、一定の給付を目的に行う贈与です。

例えば、「毎年100万円ずつ10年間にわたって贈与する」という契約は定期贈与になります。

上記の例で、連年贈与を10年間繰り返せば、定期贈与10年間と結果は同じで、10年間の合計で1000万円贈与することになります。

しかし、贈与が「定期贈与」とみなされると、各年の受贈額が110万円(基礎控除額)以下であっても、定期贈与のトータル金額を基準にして計算され、トータルのうち控除額を超えた部分に応じて贈与税がかかります。


ここで、前述したような「毎年100万円ずつ10年間にわたって贈与する」旨の贈与契約書を書いてしまうと、その契約書自体が「定期贈与」の証拠となってしまいます。

さらに、税務上の問題の他にも、注意しなければならない重要なことがあります。

つまり、書面(契約書)による贈与は取り消すことができないため、その契約どおりに贈与を続けなければならない、ということです。


贈与が定期贈与とされないためにはどうすれば良いでしょうか。

それは、毎年の「贈与契約書」をしっかりと残すことがとても重要です。

毎年、贈与契約書を書くことで、行なっている贈与が定期贈与ではなく、単なる連年贈与であることを示すことができます。


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参考<国税庁・タックスアンサー>

No.4402?贈与税がかかる場合

毎年、基礎控除額以下の贈与を受けた場合

Q1
親から毎年100万円ずつ10年間にわたって贈与を受ける場合には、各年の受贈額が110万円の基礎控除額以下ですので、贈与税がかからないことになりますか。


A1
 定期金給付契約に基づくものではなく、毎年贈与契約を結び、それに基づき毎年贈与が行われ、各年の受贈額が110万円以下の基礎控除額以下である場合には、贈与税がかかりませんので申告は必要ありません。

 ただし、毎年100万円ずつ10年間にわたって贈与を受けることが、贈与者との間で契約(約束)されている場合には、契約をした年に、定期金給付契約に基づく定期金に関する権利(10年間にわたり100万円ずつの給付を受ける契約に係る権利)の贈与を受けたものとして贈与税がかかります。

 なお、その贈与者からの贈与について相続時精算課税を選択している場合には、贈与税がかかるか否かにかかわらず申告が必要です。

(相法21の5、24、措法70の2の4、相基通24-1)

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さらに続きます。

・生前贈与加算に注意
・未成年でも贈与税を払うの?
・贈与税の申告をすれば大丈夫か?
・など






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